記憶の糸を辿っていくと
必ず出くわす場面がある
母の膝で昔話を聞いた遥かな日
妻と出会ったかの時
七十年は瞬く間に過ぎ
向寒
某日ストーブの側で
物思いに耽りに耽り
日も暮れ途方に暮れ
夜陰に紛れバッハを聴いた
この饒舌な静謐
風呂敷に包み
七丁ほど先の盟友に届けたい
四合瓶添えて
二〇一四年如月
カザルスのチェロが韻韻と鳴り
三百年が後戻りを始める
未だ狼たちが風を糧とした
あの時代に
Photo by T.matsuoka
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