秋が透けていこうとする
忘れたような冬がなおやってくるのだろうか
取り残されたように夜行列車が走りぬけていく
闇の中を
アルコールと幾条かの煙草の煙をつきぬけたローサーの怒鳴り声
その向こうに小さなルネッサンスがあった
そしてそれぞれの直熱管達の新たな軌跡が
雲の空のように回転する
ズボンを穿いた雲のように
過日ふと旅のつれづれに立ち寄った旅の若者
彼がつと取りあげたフルートからバッハの無伴奏がまるで魔法のように夜を吹き抜けていった
若者は常に変わらず、ただ僕達だけが老いていくのだろうか
華やかだが異様な顔を持つというバロックの時代が流伏水の中から新たに生まれようとしている
Photo by T.matsuoka